「システム」と言う語はITが社会に広く浸透した現在では世間一般でよく聞くようになりましたが、改めて考えてみるとこれ程曖昧な定義の語は他になかなかないのではと思えます。恐らくは大学で「システム工学」を修めた技術者でも明瞭に答えられないのではないかと想像しますが、それぐらい理解しにくい語であるということです。ネットや専門書などの説明文を読んでも雲をつかむようなことしか書いていないので、そのままにしている学生や社会人がほとんどでしょう。実際、この語を分かりやすく日本語に訳そうにも他の術語と違って統一的な訳語がなく、「系」「方式」「制度」「機構」「組織」と言うような抽象名詞的な訳語が多数あることでますます分かりにくくなっています。
人間や動物と比較しますと、細胞が個々の電子部品やデバイスの類で、回路モジュールが生体組織に相当し、頭脳や臓器などの器官が(サブ)システムとなり、個体がシステムまたはその集合体と言う所となります。つまり人間や動物にはパソコンや家電などと同様に、個体(製品)を頂点として細胞(電子部品)を最下層とするヒエラルキー構造を有し、階層間を信号電流やデジタル符号を含むパルス電圧などが伝達されることによって有機的に結合させているということです。上記のような説明をすると技術者や理科に造詣のある人なら理解できますが、そうでない人にはまだ分かりにくいかも知れませんので、さらに噛み砕いての説明を試みるとします。つまり、人間というシステムは、例えばペンを動かして字を書こうと頭脳という器官が考えたときに、まずペンがどこにあるかを探したりペンを走らせる命令を目や手などを動かす筋肉(組織)に伝え、目や手を動かすために細胞が血液や体液から栄養をもらって働く、という動作をするものです。
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